料理人がChatGPTで原価計算をやってみた|使える部分と、任せてはいけない部分
現役料理人がChatGPTに原価計算をやらせてみた実録。食材と価格を一気に打ち込むだけで計算してくれる便利さと、それでも最終チェックだけは人がやるべき理由を、現場の視点で解説します。
2026年7月25日(更新:2026年7月25日)
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原価計算は、料理人の仕事の中でも地味にしんどい部類です。
味を決めるわけでも、手を動かすわけでもない。でも、やらないと店が傾く。そういう作業を、ChatGPTにやらせてみました。
結論から言うと、「走り」はまかせていい。でも「最終チェック」は人がやる。 フレンチ・イタリアンの現場で10年やってきた立場から、実際に試して分かったことを書きます。
原価計算の何がしんどいか
まず、現場の実感から。
原価計算そのものは、難しい作業ではありません。使った食材の量と、その原価を足していくだけ。算数です。
しんどいのは、その時間を捻出することと、メニューが一気に増えたときに追いつかないことです。
営業の合間に電卓を叩く時間はありません。しかも季節でメニューが変わり、新しい皿が一気に何品も追加される。そのたびに一品ずつ原価を出していくと、それだけで気が滅入る。「あとでやろう」と後回しにして、気づけば原価が曖昧なまま出している——飲食店あるあるだと思います。
この「面倒で後回しになる作業」は、AIに向いていそうでした。
実際にやらせてみた
やり方はシンプルです。使った食材と、その量、原価を一気に打ち込む。 それだけ。
きれいに整える必要はありません。頭に浮かんだ順に、ばーっと書く。
このメニューの原価を出して。 玉ねぎ 100g 1個50円、鶏もも 200g 100gあたり120円、 生クリーム 50ml 1パック200ml 300円、バター 20g……
こんな雑な打ち方でも、ちゃんと計算して原価を出してくれます。 単位がバラバラ(個・g・ml・パック)でも、そこを揃えて計算してくれるのが地味にありがたい。電卓だと、この単位換算のところで間違えるんです。
複数のメニューをまとめて渡しても、一品ずつ分けて出してくれます。一気に追加された新メニューを、まとめて処理できる。まさに、しんどかった部分がそのまま楽になりました。
使える部分:計算の「走り」
やってみて、はっきり役に立ったのはここです。
ゼロから原価表を作るときの「走り」。 たたき台を一気に作ってくれるので、白紙から始めるより圧倒的に速い。単位換算もやってくれるので、計算ミスの入り口が減ります。
| 電卓・手作業 | ChatGPT | |
|---|---|---|
| 単位換算 | 自分でやる(ミスの元) | まとめてやってくれる |
| 複数メニュー | 一品ずつ | 一気に処理 |
| 白紙からの速さ | 遅い | 速い |
面倒で後回しにしていた作業のハードルが、確実に下がりました。
任せてはいけない部分:最終チェック
ただし、出てきた数字をそのまま使ってはいけません。最終チェックは、必ず人がやります。
理由は2つあります。
ひとつは、AIが前の会話から古い数字を拾ってくることがあるから。今のところ計算そのもののミスには当たっていませんが、以前に打ち込んだ食材の価格を、別のメニューの計算でそのまま使ってくる場面がありました。仕入れ値は日々動きます。「先週の玉ねぎの値段」で今週の原価を出されても気づけない。数字がそれらしく出てくるぶん、かえって見逃しやすい。いつかやられるな、と警戒しています。
もうひとつは、AIには現場の感覚がないから。たとえば、玉ねぎ1個100gと打っても、実際に皮を剥いて使えるのは八割ほど。しかもこの歩留まりは季節でも少し変わります。小さい時期もあれば、傷みが多い時期もある。魚なら、捌けば半分近くが骨とアラになる。この「歩留まり」を、AIは渡さない限り計算に入れません。仕込みの手間や廃棄する部分まで含めた「本当の原価」は、現場を知っている人間しか詰められない。
だから私の使い方は、AIにたたき台を作らせて、そこに現場の補正を入れるという形に落ち着きました。
結局、どう使うのが正解か
一言でいうと、適材適所です。
走り出しはAIが速い。でも、そこで止めてはいけない。最後は自分の目で見て、現場の感覚で補正する。この順番を守れば、原価計算は確実に楽になります。
逆に、全部まかせて出てきた数字を信じ込むと、いつか痛い目を見ます。AIは優秀な電卓ではなく、雑に相談できる下書き係。そう捉えるのが、一番実態に合っています。
これは献立を相談したときと同じ結論です。考える部分・判断する部分は渡さない。作業の入り口だけ渡す。AIとの付き合い方は、用途が変わっても結局そこに行き着きます。
まとめ
- 原価計算のしんどさは「時間の捻出」と「一気に増えたとき」。ここはAI向き
- 食材・量・原価を雑に打ち込むだけで、単位を揃えて計算してくれる
- 使えるのは計算の「走り」。白紙からのたたき台づくりが速い
- 任せてはいけないのは最終チェック。古い価格を拾うことがあるし、歩留まりなど現場の感覚を持っていない
- 正解は適材適所。たたき台はAI、補正と確認は人
原価計算に追われている料理人こそ、一度試す価値があります。ただし、出てきた数字は必ず自分の目で確かめてください。
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